情報電子工学概論 1 のアンケート no.4 (07/27 2005)


目次


はじめに

4 回目の講義で課したアンケート項目は以下のものでした。

  1. コンピュータに関してどういうことを勉強したいか
  2. コンピュータが今後どうなると良いと思うか
  3. この講義に関して自由に (今回はなければ書かなくても結構)
回答数は 88 名でした。

最初の質問は 1 回目のアンケートでも聞いた項目ですが、 この講義を通じてコンピュータに関する見方、考え方が変化したかも知れず、 この意見も変化しているかも、と思ってあらためて聞いてみました。


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集計結果


コンピュータに関してどういうことを勉強したいか

色んなものが書かれていましたが、おおまかに分類してみました (カッコ内の後ろの数字は 1 回目のアンケートの同回答の割合)。

前回に比べて、小数の専門的な意見が増えていますが、 今回のテーマがプログラミングだったせいか、プログラミング、 という意見が圧倒的に多かったですし、だいぶ増えています。 ネットワーク、という意見がかなり減りましたが、 逆に前回は一人もなかった OS という意見が 10 人ありました。 この講義で多少その辺りに関心を持ってもらったなら、 まあよかったかな、とも思います。

しかし全般的に、漠然とした回答がだいぶ減って、 具体的な意見が増えたような気がしますし、 今回は多少それなりに文章が書かれた回答が多かったように思います。 自分の意見を文章でまとめることも含めて、 少しでも前進していれば、それはそれなりに結構なことだと思います。 興味あることがあれば、自分の時間を利用して、 是非自分の好きなことを自分なりに勉強してみてもらいたいと思います。

また、OS に関心を持ってもらった人のために、MS-Windows 以外の OS に 触れる機会を提供することも少し考えています。 詳しくは以下をご覧ください。

なお、「オントロジー」というのは、何か新しい概念の用語のようですが、 意味はよくわかりませんでした。


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コンピュータが今後どうなると良いと思うか

一人で複数回答しているものも多かったのですが、 それらもすべて数え上げました。大まかに分類して上げます。

より使いやすく、わかりやすく、あるいは誰でも使えるように、 という意見が最も多かったのですが、 それは、学生が現在のパソコン、多分 OS やアプリケーションソフトといった ソフトウェアの点でまだわかりやすくない、使いやすくない、 と感じていることを意味しているのだと思います。

しかし、私は現在の形の PC は、ある程度の使いにくさ、 わかりにくさの存在は必然で、 むしろちゃんと勉強しないと使えないものなんだ、 という認識が必要なのではないかと考えています。

例えばマウスや携帯電話の入力方式は初心者にも使いやすい 直観的なインターフェースですが、 それで大量の文字を入力するのは時間もかかるし効率的ではなく、 その点ではキーボードを使う方がいいでしょう。 現在の形の PC で何をするかといえば、 初心者的な作業ではなく、それなりにワープロや表計算、データ管理、 メールなどのソフトを使うわけですが、 それらはいずれも人間がある程度の量の文字入力を必要としていて、 それらをマウスや携帯電話の入力方式でやれ、と言われたら閉口するでしょう。 つまり、現在の形の PC は、多少の訓練を受けてキーボードを使いこなせるように なるべきものなのだと思います。

音声入出力、特に音声入力 (音声認識) の方は、 キーボードアレルギーの人などには良いインターフェースかも知れませんが、 入力するための音声が外にもれるので必ずしも良い点ばかりではなく、 むしろある程度制限された場所、 制限された用途でしか使えないのではないかと思います。

脳波によるコンピュータへの入力、またはその逆、といった話も SF 映画などの影響か良く出る意見ですが、 たとえ 1 秒でも私が考えていることを直接 コンピュータのようなデータが消えずに残ってしまう媒体に 送るような危険なことはしたくないですね。

「自律性」とは、我々が命令しなくても何かをする、ということなら、 我々の意識的な命令を入力とはせず、無意識の命令や センサによる入力に対して応答するような仕組みにすれば「自律的」 といえるんではないでしょうか。 そういう計画された「自律的」なソフトやコンピュータは既にたくさんあります。

「容易にプログラミングが」は、講義でも話したように、スクリプト (JavaScript だけのことではありません) がそれに相当すると思います。 日本語のプログラム言語も講義で紹介したように色々あります。 例えば以下を紹介しておきます。 その WWW ページにも書かれていますが、書籍も出ています。 日常の作業を自動化するような話が色々書かれていて、 おもしろいのではないかと思います。

現在、コンピュータによる犯罪が社会的な問題になっている中で、 「犯罪防止」というのは少し変わった視点かもしれません。 そのような仕組みが作れるとおもしろいかもしれませんね。 ただ、コンピュータは善、悪の判断ができませんから、 便利になれば、それは悪用する人に取っても便利だということで、 諸刃の刃という仕組みを避けるのは難しいような気がします。 だから「悪用されないような仕組み」も「悪用」を判断するのは人間ですから、 難しそうですよね。

「ある程度不便なままでよい」は私もそうだと思います。 便利であることが必ずしもいいことだとは思いません。 しかし一方で、人間の行動基準の一つが「便利」であるのも事実です。 だから、便利な方向は何かを考えることも多分必要になってくると思いますから、 そういう視点は忘れない方がいいでしょう。

「コンピュータを使える人に対する偏見」は、最初のアンケートでもわかるように 8 割がパソコンを持っている現在ではなさそうな気がします。 例えば、ほとんど携帯電話を持っていない小学生が携帯電話を使えたら すごいと思われるかもしれませんが、 ほとんどが携帯電話を持っている大学生にはあまりあてはまらないでしょう。 8 割がパソコンを持っていればコンピュータを上手に使えても、 まあそんなもんかと思われるだけだと思いますよ。 例えばコンピュータを使える情報電子の教員のことを「マニア」だと思いますか ? それに「マニア」であることは決して悪いことではないと思います。 マニアであることを堂々と誇りに思ったらいかがでしょうか。
# 私だって「数学マニア」「Unix オタク」かも


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講義に関して書かれていたこと

アンケートの最後の項目の「この講義に関して自由に」の部分に 書かれていたことを上げます。

最初の 3 つはいつものことですが、これでも努力しているつもりで、 せめてこれ位にはついてきてもらいたいところです。

「専門用語が多い」というのもそうかもしれませんが、 大学の講義では講義中に内容をすべて理解できる人はそんなに多くいません。 それは講義後に自分で調べてください。それが大学の講義の受けかたです。 それに簡単な用語しか話していませんから、簡単に調べられると思います。

「実習室で」とありますが、前に言ったように 残念ながら私は MS-Windows はほとんど知りませんから、 実習室では何も教えられません。 しかしせっかくですから、1 つ、2 つインタプリタの良さを紹介しましょう。

コンパイラは、一般的に変数定義などもあらかじめ定義する必要があり、 インタプリタのソースに比べて「おまじない」部分がかなりあります。 インタプリタはそういうところが短かい、省略できるのが特徴です。 以下は、x=2 と y=3 の和を出力する (あまり意味のない) プログラム例です。

上を比較してわかると思いますが、C 言語では 「おまじない」や使用する変数の定義などが必要ですが、 インタプリタではそれはあまり必要ありません。

また、インタプリタではそれらに得意な処理があり、 それ用のツール (サブルーチン) が用意されていることも特徴です。 例えば、上にあげた AWK は行単位の文字列処理が得意で、 入力のアルファベットの小文字をすべて大文字にするプログラムを書くと 以下のようになります。

C にも AWK にも小文字を大文字に変換する関数 toupper() がありますが、 C では文字毎、AWK は文字列毎、というところが違いますし、 C では while 文を使ってループにしないといけませんが、 AWK は行単位の処理で入力 1 行が $0 に入るので、 簡単に 1 行で書くことができます。


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その他

講義の最後にも述べましたが、例年アンケートを見ていると

のような学生の意識が見られます。 今年の意見も同様だったのですが、 実際にはそれらはほんの一部に過ぎず 他にも色んな技術や理論があって実際に色んな場面で使われている ことを知ってもらいたい、 狭い分野の知識だけでなく、広い視野を持って物事を考えてもらいたい、 といったことを目標に講義を進めて来ました。 その目標がどれくらい達成できたかは知りませんが、 多少でもそういったことを意識してもらえれば 色々勉強して講義したかいがあったかなと思います。

また、今年も「なし」「わからない」という意見や 他人の意見、講義内容をそのまま写して書いているような意見も 多かったように思います。 今まで考えてみなかったことを見方を変えて考えてみる、 人に頼らずに自分で物を考える、 ということは工学を学ぶ者として、大学生としてとても大事なことだと思います。 そういうことができるようになってもらいたいと思います。


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作成日: 08/28 2005
竹野茂治@新潟工科大学 (shige@iee.niit.ac.jp)