情報電子工学概論 1 のアンケート no.4 (07/09 2003)


目次


はじめに

4 回目の講義で課したアンケート項目は以下のものでした。

  1. コンピュータが今後どうなると良いと思うか
  2. コンピュータに関してどういうことを勉強したいか
  3. インターネットに関する不満
  4. この講義に関して自由に (今回はなければ書かなくても結構)
回答数は 90 名でした。

2 つ目の質問は 1 回目のアンケートでも聞いた項目ですが、 この講義を通じてコンピュータに関する見方、考え方が変化したかも知れず、 この意見も変化しているかも、と思ってあらためて聞いてみました。


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集計結果


コンピュータが今後どうなると良いと思うか

一人で複数回答しているものも多かったのですが、 それらもすべて数え上げました。大まかに分類して上げます。

ハードウェア、ソフトウェアの改良に関する意見は、 コンピュータのうちパソコンのことを考えているものが大半のようです。 小さく、安く、扱いやすく、というのは、 例えば機器埋め込み型のマイコンは既にそのようになっていると思うのですが、 まだ「コンピュータ=パソコン」という固定概念があるようですね。

マイコンのように機器埋め込み型で専用の処理を行うものと、 汎用のコンピュータでは自ずから違いがあると思いますが、 汎用のコンピュータは入力/出力が多種/大量であることが多いでしょうから むしろ小さくなることでデメリットも多く発生するように思いますので 必ずしも全部が小さくなるようには思いません。

タッチパネル式、音声入力、あるいは色んなインターフェース、 などの意見も上がっていますが、 現在のパソコン用で普及しているインターフェースは 必ずしも使いやすいもの、最良のものではないので、 今後色んなインターフェースが出て来る可能性はあります。 音声入力はキーボードアレルギーの人などには 良いインターフェースかも知れませんが、 入力するための音声が外にもれるので、必ずしも良い点ばかりではなく、 むしろある程度制限された場所、制限された用途でしか 使えないのではないかと思います。

体に馴染む、というのは、携帯端末が人間活動を補佐する、という点で 大事なことだと思います。目的、用途によってどのように「馴染む」のか、 は色々違うでしょうし、具体的にどうなれば良いのか、 ということを考えてみるのも良いでしょう。

AI は、もしある程度の形のものができれば 自然にコンピュータに導入されて行くことになると思います。 現在も翻訳ソフトやゲームソフトなどに部分的に含まれていると 言っても良いでしょう。 それが OS に組み込まれ、インターフェースを司るようになると、 パソコンはかなり変化するのではないでしょうか。

しかし、人間は簡単には進化しないので、そのようなコンピュータが現われるまでは 汎用のパソコンは、自動車の運転と同様ある程度の勉強をしないと 正しく使えるようにはならない、という形のままなのではないかと思います。 そういう点でパソコンと自動車と比較して見ると色々パソコンの問題点や 進むべき方向なども違った目で見ることができると思います。

より初心者にやさしい、より扱いやすい、という意見もかなりありましたが、 もしパソコンが現在よりもそのようになったとすると、 果してそれがパソコンに熟練した人にも使いやすい、効率的であるかどうかは 問題だろうと思います。 例えばマウスや携帯電話の入力方式とキーボードを比較してみれば分かると思います。 マウスや携帯電話の入力方式は初心者にも使いやすい 直観的なインターフェースですが、 それで大量の文字を入力するのは時間もかかるし効率的ではありません。 むしろ、多少の訓練を受けてキーボードを使いこなせるようになった方が そういう処理には向いているでしょう (実際にこれが私が MS-Windows を使わない理由の一つにもなっています)。 分かりやすい、易しい、扱いやすい、というキーワードが 必ずしも良い面ばかりではないことを頭に入れておくと 物の見方も変わるかも知れません。

「複数のコンピュータが連携して」は現在でも一般ユーザではなく 研究室レベル、企業レベルでは良く行われていますし、 「MS-Windows と Linux の統合」も、 一つの OS 上で仮想 OS を動かすという仕組みならば現在でも広く使われていて、 再立ち上げをせずに複数の OS を使い分ける、ということが可能です。 なお、「MS-Windows と Linux の統合」には 個人的には面白みやメリットをあまり感じません。 むしろそれぞれの特徴をいかして、今後もそれぞれの得意分野で 使われていけば良い、 ユーザも自分にあったものを使ったら良い、と思っています。

「仮想現実」に関してはかなり SF 的な意見もありましたが、 映画 (Matrix) の影響でしょうか。

コンピュータに人間が使われない、というのもある意味では大事だと思います。 まあ、逆にのめり込んでしまう学生が出ても学生のうちは構わないんじゃないか とも思いますが。 私も今家にはパソコンはありませんが、これが理由の一つでもありますね。

老人や障害者にも使えるコンピュータ、というのは大事なことだと思います。 本来、人間を補佐する、人間に便利なはずのコンピュータが、 そういう人達に不親切であるのは本末転倒で、 むしろ積極的にそういう点に開発が進むべきだろうと思います。 しかしこれも色々な点で問題は多いようですね。


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コンピュータに関してどういうことを勉強したいか

色んなものが書かれていましたが、おおまかに分類してみました。

今回のテーマがプログラミングだったせいか、プログラミング、 という意見が圧倒的に多くて 逆に 1 回目の意見より面白みがなくなったように見えます。 特に今回はネットワークやインターネットに関して勉強してみたい、 という意見がほとんどなくなってしまいました。 単にその回のテーマのことを書いているだけなんでしょうか。

具体的すぎる意見も大半は今一つといった感じですし、 これを見ると、果してこの 4 回の講義で、 コンピュータに関してどんな風に意識が変わったのか、 やや疑問が残る結果となったようです。

ただ、「新しい技術」という意見がある一方で「古い技術」という意見もあるのは ややおもしろいですね。


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インターネットに関する不満

色んなものが書かれていましたが、おおまかに分類してみました。

多かったのは、ウィルスや犯罪行為などのインターネットの負の側面、 現在のハードウェア設備に対する不満や情報検索に対する不満でした。 通信速度が遅い、料金が高い、というのはある程度仕方がないでしょう。 インターネットの負の側面は、現在はむしろ実験段階のインターネットで、 今後新しい規格 (IPv6) に変わると多少その点は変化して来ると思います。 ただ、インターネットであるかどうかに関わらず現実に犯罪者はいますし、 犯罪行為も行われていますから、ゼロにすることはできないでしょうし、 コンピュータの原理からして、インターネットではそういうことが起きやすい、 広まりやすい、というリスクは頭に入れておくべきで、 それに対応できるような知識を知っておいて適切に使う、 ということの方が大切だろうと思います。

セキュリティを強化する、法律で使用を制限していく、というのは セキュリティに関しては良くなるかも知れませんが、 その反面で現在の自由な環境が失われて インターネットの魅力が落ちる可能性も持っています。 例えば政府機関が解読できないメールの暗号化は許さない、 ということが以前からアメリカで議論されています。 これに関して、考え得る賛成意見と反対意見を自分で考えてみると 勉強になると思います。

情報があふれすぎ、どれが正しい情報か分からない、 というのも難しいところですね。 ただ、それまで大手のメディア (新聞、ラジオ、テレビ、出版社) のみに制限されて来た情報配信が一般に解放されたおかげで 見えてなかったことが見えて来た、ということもあります。 現在の多くの情報から正しく選別する方法を勉強することは必要なことですし、 それを身につければ大きな武器になるでしょう。 検索に関する不満も、ではどのようになれば良いのか、 それを実現するにはどうしたら良いかを少し考えてみてください。 多分、現在の仕組みはそんなに悪くなく、むしろユーザが正しく使うべきだ、 ということがわかるでしょうし、 もしそうではなく現在のものよりももっと良い仕組みを考えた、 というのならそれは大きな発明になるかも知れませんよ。

前にも言いましたが、これらの不満をヒントに具体的な改善策を考えることは 良い勉強になると思います。

例えば更新されていない WWW ページはどうしたらいいでしょうか。 簡単に更新するにはどうしたら良いでしょうか。 WWW で得られる情報の信頼性を上げるにはどうしたら良いでしょうか。

勝手にいくつかのページが開く、というのは実は簡単に解決できます。 要は便利な機能を使わない、便利なソフトを使わない、それだけです。 ウィルスだってそれで防げます。 例えば私のところに送られて来るウィルスはほとんど意味がありません。


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講義に関して書かれていたこと

アンケートの最後の項目の「この講義に関して自由に」の部分に 書かれていたことを上げます。 今回は特になければ書かなくていい、としたので あまり多くは書かれていませんでした。

設問 1,2,3 のアンケートの結果を見ると、 ここに書かれている意見ほどには私の言いたかったことは 通じなかったのではないかと思いますが、 まあとりあえず否定的な意見が少なかったので良かったとは思います。

「お疲れさま」という意見がありましたが、 かなり無理して頑張っているように見えたのでしょうか。 まあしかし無理して頑張っていたのは確かですし、大変疲れました。


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その他

今回のアンケートはいくつか誤字や変な表現等が目立ちました。

最後の 2 つは、最近の若者の間では使われている言葉かも知れませんが、 少なくとも教員に出す物に書く言葉ではないように思います。

講義の最後にも述べましたが、昨年のアンケートでは

のような学生の意識が見えました。 今年の意見も同様だったのですが、 実際にはそれらはほんの一部に過ぎず 他にも色んな技術や理論があって実際に色んな場面で使われている ことを知ってもらいたい、 狭い分野の知識だけでなく、広い視野を持って物事を考えてもらいたい、 といったことを目標に講義を進めて来ました。 その目標がどれくらい達成できたかは知りませんが、 多少でもそういったことを意識してもらえれば 色々勉強して講義したかいがあったかなと思います。

また、今年は昨年よりも「なし」「わからない」という意見や 他人の意見をそのまま写して書いているような意見も多かったように思います。 今まで考えてみなかったことを見方を変えて考えてみる、 人に頼らずに自分で物を考える、 ということは工学を学ぶ者として、大学生としてとても大事なことだと思います。 そういうことができるようになってもらいたいと思います。


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作成日: 07/14 2003
竹野茂治@新潟工科大学 (shige@iee.niit.ac.jp)