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1 はじめに

基礎数理 I I Iの教科書 [1] には、 有理関数がどのような形の部分分数に分解されうるのかと、 その未定係数法による実例は書いてあるが、 なぜそのような形に分解可能なのかという理由については 説明がなされていない。

そこで、部分分数分解の原理として、私は例年次の定理、 そしてそこから得らえる系を紹介している。


定理 1

整式 $A(x)$, $B(x)$$\deg A<\deg B$ ($\deg f(x)$ は、整式 $f(x)$ の次数を意味する) のとき、 $B(x)=B_1(x)B_2(x)$ で整式 $B_1(x)$, $B_2(x)$ が互いに素ならば、

となるような整式 $A_1(x)$, $A_2(x)$ が、ただ 1 組存在する。



系 2

整式 $A(x)$, $B(x)$$\deg A<\deg B$ のとき、 $B(x)=B_1(x)B_2(x)\cdots B_n(x)$ で、 整式 $B_1(x)$, $B_2(x)$, ...,$B_n(x)$ がどの 2 つも互いに素ならば、

となるような整式 $A_1(x)$, $A_2(x)$, ..., $A_n(x)$ が、 ただ 1 組存在する。


なお、2 つの整式 $f(x)$, $g(x)$互いに素 であるとは、 1 次以上の共通因子 ($f(x)$, $g(x)$ の両方を割り切る整式) が 存在しないことを意味する。

講義では、証明なしでこの定理を紹介しているだけだったので、 ここにその証明を簡単にまとめておくこととする。

なお、以下は実数係数の整式 (多項式) を考えることとするが、 有理数係数の整式に限定しても、あるいは複素数係数の整式に広げても 同じ論法が使える。


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竹野茂治@新潟工科大学
2006年6月2日