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2 図形による加法定理の証明

まず、図形による初等的な加法定理の証明をいくつか紹介する。 ただし、任意の角度に対するものではなく、小さい正の角に対するものであるし、 これら以外にも図形的な証明は多分色々あると思う。


証明 1

1 のように、直角三角形を 2 つ重ねる。

図 1: 証明 1 の図
\includegraphics[width=0.6\textwidth]{sinadd1.eps}

$AD=1$ とすると $AC=\cos y$ となるので $AB = AC\cos x=\cos y\cos x$ となる。

一方 $CD= \sin y$ であり、三角形 $AEF$ と三角形 $DCF$ は相似なので 角 $CDF=x$ であり、よって $BE = CG = CD\sin x = \sin x\sin y$ となる。 ゆえに

\begin{displaymath}
\cos(x + y) = AE = AB-BE = \cos x\cos y - \sin x\sin y
\end{displaymath}

となる。

また、 $DG = CD\cos x = \sin y \cos x$, $GE = CB = AC\sin x = \cos y \sin x$ となるので、

\begin{displaymath}
\sin(x + y) = DE = GE + DG = \sin x\cos y + \cos x\sin y
\end{displaymath}

となる。



証明 2

2 のように、直角三角形を 2 つ並べて一つの三角形 $ABC$ を作る。

図 2: 証明 2 の図
\includegraphics[width=0.6\textwidth]{sinadd2.eps}
この高さ $AD=1$ とすると、

\begin{displaymath}
AB = \frac{1}{\cos x},\hspace{1zw}
BD = AB\sin x = \frac{\sin x}{\cos x} =\tan x
\end{displaymath}

同様に

\begin{displaymath}
AC = \frac{1}{\cos y},\hspace{1zw}
CD = AC\sin y = \frac{\sin y}{\cos y} =\tan y
\end{displaymath}

より $BC = BD + CD = \tan x + \tan y$ である。 よって、余弦定理

\begin{displaymath}
BC^2 = AB^2 + AC^2 -2AB\cdot AC\cos (x+y)
\end{displaymath}

より、

\begin{displaymath}
(\tan x + \tan y)^2 = \frac{1}{\cos^2 x} + \frac{1}{\cos^2 y}
-2\frac{1}{\cos x}\cdot\frac{1}{\cos y}\cos(x+y)
\end{displaymath}

となるので、

\begin{eqnarray*}
\lefteqn{2\frac{1}{\cos x}\cdot\frac{1}{\cos y}\cos(x+y)}\\
...
... y}\\
& = & 2\frac{\cos x\cos y - \sin x\sin y}{\cos x\cos y}
\end{eqnarray*}

となる。よって両辺に $\cos x\cos y/2$ をかければ cos の加法定理 (2) が得られる。

一方、面積を考えると、

\begin{displaymath}
\triangle ABD = \frac{1}{2}AD\cdot BD = \frac{1}{2}\tan x,
...
...w}
\triangle ACD = \frac{1}{2}AD\cdot CD = \frac{1}{2}\tan y
\end{displaymath}

であり、また

\begin{displaymath}
\triangle ABC = \frac{1}{2}AB\cdot AC\sin(x+y)
= \frac{\sin(x+y)}{2\cos x\cos y}
\end{displaymath}

であるので

\begin{displaymath}
\frac{\sin(x+y)}{\cos x\cos y} = \tan x+\tan y
= \frac{\sin x}{\cos x} + \frac{\sin y}{\cos y}
\end{displaymath}

となり、両辺に $\cos x\cos y$ をかければ sin の加法定理 (1) が得られることになる。


証明 1 の方は図を工夫して、式での計算を少なくする証明方法で、 証明 1 の方は図は単純で、むしろ式の計算で結果を出す証明方法であり、 それぞれ特徴があるので、これらの証明を頭に入れて加法定理を覚えようとする 場合はその特徴に注意し、どちらが覚えやすいのかを比較するとよい。

なお、私が高校のときは、三角関数の加法定理は行列の一次変換のところで 回転行列を使った証明方法で教わった。すなわち、

\begin{displaymath}
\left[
\begin{array}{rr}
\cos(x+y) & -\sin(x+y)\\
\sin(x+...
...}{rr}
\cos y & -\sin y\\
\sin y & \cos y
\end{array}\right]
\end{displaymath}

の行列の積として証明するやり方である。 しかし現在高校のカリキュラムでは一次変換がなくなったので (多分)、 これで学生に説明するのはかなり準備を必要とすることになってしまった。


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Shigeharu TAKENO
2003年 3月 4日