5 有理数乗の指数法則

本節で、いよいよ有理数乗の指数法則 [L1]$\sim$[L5] を証明する。 $a,b,x,y$ には次の条件 Q を課す:
条件 Q: $a,b$ は正の任意の実数、$x,y$ は任意の有理数
まずは、[L1],[L2] から。

まずは $x=\frac{m}{n}>0$, $y=\frac{p}{q}>0$ ($m,n,p,q$: 自然数) の 場合に [L1],[L2] が成り立つことを示す。 この場合、[L1] は、

  $\displaystyle
a^{\frac{m}{n}}a^{\frac{p}{q}}=a^{\frac{m}{n}+\frac{p}{q}}$ (16)
を示すことになるが、この左辺を $z$ とすると、 自然数乗に対する [L4],[L3],[L1]、および [R1] により、
\begin{eqnarray*}z^{nq}
&=&
\left(a^{\frac{m}{n}}a^{\frac{p}{q}}\right)^{nq}
...
...t[q]{a^p})^q\}^n
=(a^m)^q(a^p)^n
\\ &=&
a^{mq}a^{pn}=a^{mq+pn}\end{eqnarray*}
となるので、[R2] により
$\displaystyle z=\sqrt[nq]{a^{mq+pn}}=a^{\frac{mq+pn}{nq}}
=a^{\frac{m}{n}+\frac{p}{q}}
$
となって、(16) が成り立つことがわかる。

また、$x>0$, $y>0$ に対する [L2] については、 $x>y$ のときは (16) により、 (1) の方法で、

$\displaystyle \frac{a^x}{a^y} = a^{x-y}$
がわかり、$x=y$ ならば明かに [L2] は成立し、 $x<y$ のときは (16) により、
$\displaystyle \frac{a^y}{a^x}=a^{y-x}
$
となるので、その逆数を考えれば
$\displaystyle \frac{a^x}{a^y}=\frac{1}{a^{y-x}}=a^{-(y-x)}=a^{x-y}
$
となって [L2] が成立する。

これで、$x>0$, $y>0$ のときには [L1],[L2] が成立することがわかった。 あとは $x\leq 0$, $y\leq 0$ の場合であるが、 これは整数乗の場合と証明は実質的に同じである。

$x=0$ または $y=0$ の場合は、[L1] は明らかに成立し、 あとは前と同じ (ア)(イ)(ウ) に場合分けすればいいのであるが、 いずれも $x>0$, $y>0$ で成立する [L1],[L2]、 および (14) により、 (ア) の場合は (5)、 (イ) の場合は (6)、 (ウ) の場合は (7) と同じ式変形により成立することがわかる。

[L2] は、(1) の方法で [L1] から得られる。

次は [L3] の前に [L4],[L5] の方を考える。 まずは、 $x=\frac{m}{n}>0$ ($m,n$: 自然数) の場合の [L4] から。 これは、

  $\displaystyle
a^{\frac{m}{n}}b^{\frac{m}{n}}=(ab)^{\frac{m}{n}}$ (17)
を示すことになるが、この左辺を $z$ とすると、自然数乗に対する [L4]、 および [R1] により
$\displaystyle z^n
=\left(a^{\frac{m}{n}}b^{\frac{m}{n}}\right)^n
=(a^{\frac{m}{n}})^n(b^{\frac{m}{n}})^n
=(\sqrt[n]{a^m})^n(\sqrt[n]{b^m})^n
=a^mb^m
=(ab)^m
$
となるので、[R2] により
$\displaystyle z=\sqrt[n]{(ab)^m}=(ab)^{\frac{m}{n}}
$
となり (17) が示されたことになる。

$x=0$ の場合は [L4] は明らかに成り立ち、$x<0$ の場合は、 整数乗の場合と同じ計算 (12) により、 $x>0$ に対する [L4] と (14) から 成り立つことがわかる。これで [L4] が示された。

[L5] は、(2) の方法で [L4] から示される。

最後は [L3]。これもまずは $x=\frac{m}{n}>0$, $y=\frac{p}{q}>0$ の 場合から考える。この場合は、

  $\displaystyle
\left(a^{\frac{m}{n}}\right)^{\frac{p}{q}}=a^{\frac{m}{n}\,\frac{p}{q}}$ (18)
を示すことになるが、この左辺を $z$ とすると、[R1], 自然数乗の [L3] より、
$\displaystyle z^{nq}
=\left\{\left(\sqrt[q]{\left(a^{\frac{m}{n}}\right)^p}\rig...
...(a^{\frac{m}{n}}\right)^p\right\}^n
=\{(\sqrt[n]{a^m})^n\}^p
=(a^m)^p = a^{mp}
$
となるので、[R2] より
$\displaystyle z=\sqrt[nq]{a^{mp}}=a^{\frac{mp}{nq}}
=a^{\frac{m}{n}\,\frac{p}{q}}
$
となり、これで (18)、 すなわち $x>0$, $y>0$ の場合の [L3] が示されたことになる。

$x=0$ または $y=0$ の場合は、整数乗の場合の (8) と 同じ計算で成立することがわかり、 $x<0$ かまたは $y<0$ の場合も整数乗の場合と同様の計算を行えばよい。 具体的には、(ア) の場合は (9)、 (イ) の場合は (10)、 (ウ) の場合は (11) と同じ計算をすればよいが、 そこには正の有理数乗に対する [L5] と [L3]、 および (14) を使用する (そのために [L3] より先に [L5] を証明した)。

これで [L3] も成り立つことが示され、 すべての指数法則が証明されたことになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2024-06-17