106.19 Epslatex

epslatex ドライバは LaTeX で処理すべき出力を生成します。

書式:

     set terminal epslatex   {default}
     set terminal epslatex   {standalone | input}
                             {oldstyle | newstyle}
                             {level1 | leveldefault | level3}
                             {color | colour | monochrome}
                             {background <rgbcolor> | nobackground}
                             {dashlength | dl <DL>}
                             {linewidth | lw <LW>} {pointscale | ps <PS>}
                             {rounded | butt}
                             {clip | noclip}
                             {palfuncparam <samples>{,<maxdeviation>}}
                             {size <XX>{unit},<YY>{unit}}
                             {header <header> | noheader}
                             {blacktext | colortext | colourtext}
                             {{font} "fontname{,fontsize}" {<fontsize>}}
                             {fontscale <scale>}

epslatex 出力形式は、文字列を PostScript コードに含ませる代わりに LaTeX ファイルに移すことを除けば terminal postscript eps 同様に描画します。 よって、postscript terminal と多くのオプションが共通です。

version 4.0 から 4.2 の間に、postscript 出力形式とのより良い互換性の ために epslatex 出力は変更されました。描画サイズは 5 x 3 インチから 5 x 3.5 インチへと変更され、文字幅は従来はフォントサイズの 50% と見 なしていましたが、現在は 60% と評価しています。より多くの Postscript の線種や記号も使われます。以前の状態にほぼ等しい状態にするにはオプション oldstyle を指定してください。(実際にはごくわずかな違いが残ります: 記号のサイズがわずかに違い、目盛刻み (tics) は従来の半分になっています がそれは set tics scale で変更できます。そして矢 (arrow) に関しては postscript 出力形式で使える全ての機能が利用できます。)

以下のようなエラーメッセージが出た場合:

     "Can't find PostScript prologue file ... "

以下参照: postscript prologue (106.48.3)。そしてその指示に従ってください。

オプション color はカラーを有効にし、monochrome は各要素を黒と白 描画します。さらに、monochrome は灰色の palette も使用しますが、 これは、明示的に colorspec で指定された部品の色を変更しません。

dashlength または dl は点線の線分の長さを < DL> (0 より大きい実数) に設定し、 linewidth または lw は全ての線の幅を < LW> に設定します。

デフォルトでは、生成される PostScript コードは、特にフィルタリングや filledcurves のようなでこぼこな領域のパターン塗りつぶしにおいて、 PostScript Level 2 として紹介されている言語機能を使います。PostScript Level 2 の機能は条件的に保護されていて、PostScript Level 1 のインター プリタがエラーを出さず、むしろメッセージか PostScript Level 1 による 近似であることを表示するようになっています。level1 オプションは、こ れらの機能を近似する PostScript Level1 で代用し、PostScript Level 2 コードを一切使用しません。これは古いプリンタや、Adobe Illustrator の 古いバージョンなどで必要になるかもしれません。このフラグ level1 は 出力された PostScript ファイルのある一行を手で編集することで、後から 強制的に PostScript Level 1 機能を ON/OFF にすることもできます。level 2 のコードが含まれている場合、上の機能は現われないか、このフラグがセ ットされた場合、あるいは PostScript インタプリタプログラムが level 2 以上の PostScript を解釈するとは言わなかった場合に警告文に置き換わります。level3 オプションは、ビットマップ画像の PNG 化の機能を有効に します。それにより出力サイズをかなり削減できます。

rounded は、線の端や接合部を丸くし、デフォルトの butt は尖った端と 角張った接合部を使用します。

clip は、PostScript にすべての出力を BoundingBox (PostScript の外枠) でクリップすることを指示します; デフォルトは noclip です。

palfuncparamset palette functions から出力の傾きをどのようにコ ード化するかを制御します。解析的な色の成分関数 (set palatte functions で設定される) は、postscript 出力では傾きの線形補完を用いてコード化さ れます: まず色の成分関数が < samples> 個の点で標本化され、そしてそれら の点は、結果として線形補完との偏差が < maxdeviation> 以内に収まるように削除されます。ほとんど全ての有効なパレットで、デフォルトの < samples> =2000 と < maxdeviation> =0.003 の値をそのまま使うのが良いでしょう。

PostScript 出力のデフォルトの大きさは 10 インチ x 7 インチです。EPS 出力のデフォルトの大きさは 5 x 3.5 インチです。オプション size は これらをユーザが指定したものに変更します。デフォルトでは X と Y のサ イズの単位はインチとみなされますが、他の単位 (現在は cm のみ) も使う ことはできます。描画の BoundingBox (PostScript ファイルの外枠) は、 サイズが変更された画像を丁度含むように正しく設定されます。 スクリーン座標は、オプション size で指定された描画枠の全体が 0.0 から 1.0 になります。 注意: これは、以前は、出力形式での設定よりも、コマンド set size で設定した方がいい、と言っていたことの変更を意味します。以前の方法では BoundingBox は変更されずに残ってしまい、スクリーン座標が実際の描画の限界に対応していませんでした。

blacktext は、たとえカラーモードでも全ての文字列を黒で書きます。

epslatex ドライバは文字列の配置の制御に特別な方法を提供します: (a) '{' で始まる文字列は、'}' で閉じる必要がありますが、その文字列全体 が LaTeX によって水平方向にも垂直方向にもセンタリングされます。 (b) '[' で始まる文字列の場合は、位置の指定をする文字列 (t,b,l,r,c のう ち 2 つまで) が続き、次に ']{'、文字列本体、で最後に '}' としますが、 この文字列は LaTeX が LR-box として整形します。 \ rule{}{} を使えばさ らに良い位置合わせが可能でしょう。以下も参照: ドライバ pslatex (106.49) に関する説明。 複数行の見出しを作成するには \ shortstack を使用してください。例えば、

  set ylabel '[r]{\shortstack{first line \\ second line}}'

set label コマンドのオプション back は使えますが、他の出力形式のも のとは少し違っています。front の場合の見出しが他の全ての要素の上に出 力されるのに対して、back を使った見出しは他の全ての要素の下に出力され ます。

このドライバは 2 つの別のファイルを作ります。1 つは図の eps の部分で、 もう一つは LaTeX の部分です。LaTeX ファイルの名前は、set output コマ ンドのものが使われ、eps ファイルの名前はその拡張子 (通常 .tex) を .eps に置き換えたものになります。 出力ファイルを指定しなければ LaTeX 出力は行なわれません ! multiplot モード以外では、次の描画を行なう前にその出力ファイルをクローズするのを忘れないでください。

LaTeX の文書で図を取り込むには ' \ input{filename}' としてください。 .eps ファイルは \ includegraphics{...} コマンドで取り込むので、よって LaTeX のプリアンブルに \ usepackage{graphicx} も入れる必要があります。 textcolour オプションで色付きの文字列を使用している場合は、LaTeX の プリアンブルに \ usepackage{color} も入れる必要があります。

この eps ファイルから 'epstopdf' を使って pdf ファイルを作ることもでき ます。graphics パッケージが適切に設定されている場合、その LaTeX のファ イルは、変更なしに pdflatex によっても処理でき、その場合 eps ファイル の代わりに pdf ファイルが取り込まれます。

フォントの選択に関する挙動はヘッダーモードに依存します。 どの場合でも、与えられたフォントサイズはスペースの計算にちゃんと使用さ れます。standalone モードが使われなかった場合は、include される場所で の実際の LaTeX フォントとフォントサイズが使われるので、よってフォントの 変更には LaTeX コマンドを使ってください。例えばフォントサイズとして LaTeX 文書中で 12pt を使う場合は、オプション '"" 12' を使います。この 場合フォント名は無視されます。standalone を使う場合は、与えられたフォ ントとフォントサイズが使われます。詳細は下記を参照してください。

文字列がカラーで表示されるかどうかは TeX の Bool 値変数 \ ifGPcolor と \ ifGPblacktext で制御します。 \ ifGPcolor が true で \ ifGPblacktext が false の場合のみ文字列はカラーで表示されます。それらは生成される TeX フ ァイルを変更するか、またはあなたの TeX ファイルで大域的に与えてください。 例えば

  \newif\ifGPblacktext
  \GPblacktexttrue

をあなたのファイルのプリアンブルに書きます。部分的な指定は大域的な値が 与えられていないときのみ働きます。

epslatex 出力形式を使う場合、set output コマンドで TeX ファイルの名前 を拡張子付き (通常 ".tex") で与えてください。eps ファイルの名前はその 拡張子を ".eps" に置き換えた名前になります。

standalone モードを使う場合、その LaTeX ファイルに完全な LaTeX のヘッ ダが付加され、eps ファイルのファイル名には "-inc" が追加されます。 standalone モードは、dvips, pdfTeX, VTeX を使う場合に正しいサイズで出 力されるような TeX ファイルを作ります。 デフォルトは input モードで、これは \ input コマンドを使って、別の

LaTeX ファイルから読み込まれるようなファイルを生成します。

"""default" 以外のフォント名が与えられた場合、それは LaTeX のフォント名と解釈されます。それは、'fontname,fontseries,fontshape' の、コ ンマで区切られた 3 つ以下の部分からなります。デフォルトのフォントシェイ プ、フォントシリーズが使いたい場合はそれらは省略できます。つまり、フォ ント名に対する正式な書式は、'[fontname][,fontseries][,fontshape]' とな ります。そのいずれの部分も名前に関しては LaTeX のフォント体系の慣習に従 います。fontname は 3 から 4 文字の長さで、次のような規則で作られていま す: 1 つ目がフォントの製造元を表し、次の 2 つがフォント名、オプションで 追加される 1 つは特別なフォントを意味し、例えば 'j' は旧式の数字を持つ フォント、'x' は expert フォント等となっています。以下には、多くのフォントの名前について書かれています。 http://www.tug.org/fontname/fontname.pdf

例えば 'cmr' は Computer Modern Roman フォント、'ptm' は Times-Roman, 'phv' は Helvetica 等を表します。フォントシリーズは文字の線の太さを意味 し、大半は 'm' で普通 ("medium")、'bx' または 'b' が太字 (bold) フォ ントを意味します。フォントシェイプは一般に 'n' が立体 (upright)、'it' はイタリック、'sl' は斜体 (slanted)、'sc' は小さい大文字 (small caps) となります。これらとは異なるフォントシリーズやフォントシェイプで与えら れるフォントも存在します。

例:

Times-Roman で太字 (シェイプは周りの文字列と同じもの) を使う場合:

     set terminal epslatex 'ptm,bx'

Helvetica で太字でイタリックを使う場合:
     set terminal epslatex 'phv,bx,it'

斜体のシェイプで周りのフォントを使い続ける場合:
     set terminal epslatex ',,sl'

小型の大文字 (small caps) を使う場合:
     set terminal epslatex ',,sc'

この方法では文字列のフォントのみが変更されます。数式のフォントも変更し たい場合は、"gnuplot.cfg" ファイルかまたは header オプションを使う 必要がありますが、これについては以下に書きます。

standalone モードでは、フォントサイズは set terminal コマンドで与えら れたフォントサイズが使われます。指定したフォントサイズが使えるためには LaTeX の検索パスに "size< size> .clo" というファイルが存在しなければな りません。デフォルトでは 10pt, 11pt, 12pt がサポートされています。パッ ケージ "extsizes" がインストールされていれば、8pt, 9pt, 14pt, 17pt, 20pt も追加されます。

オプション header は文字列引数を取ります。その文字列は、生成される LaTeX ファイルに書き込まれます。standalone モードを使う場合、その文字 列はプリアンブルの \ begin{document} コマンドの直前に書き込まれます。 input モードでは、その文字列は \ begingroup コマンドの直後に置かれ、 描画への設定がすべて局所的になるようにします。

例:

T1 フォントエンコーディングを使い、文字列、数式フォントを Times-Roman とし、サンセリフフォントを Helvetica と変更する場合:

   set terminal epslatex standalone header \
   "\\usepackage[T1]{fontenc}\n\\usepackage{mathptmx}\n\\usepackage{helvet}"

描画の外の文字列には影響を与えないように描画内で太字 (boldface) フォン トを使う場合:
   set terminal epslatex input header "\\bfseries"

ファイル "gnuplot.cfg" が LaTeX によって見つけられると、standalone モードを使っている場合は、それは生成される LaTeX 文書のプリアンブルに取 り込まれます。それは追加の設定を行なうのに使えます。例えば、文書のフォ ントを TImes-Roman, Helvetica, Courier と変更し、("mathptmx.sty" で扱 われている) 数式フォントを入れる場合:

     \usepackage{mathptmx}
     \usepackage[scaled=0.92]{helvet}
     \usepackage{courier}

ファイル "gnuplot.cfg"header コマンドで与えられるヘッダ情報の前 に読み込まれます。よって、"gnuplot.cfg" で行なわれる設定のいくつかを header を使って上書きすることができます。

竹野茂治@新潟工科大学
2017年9月5日