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2.3 収束判定法

無限級数の値を求めることは難しい問題であるが、 それ以前に収束するかどうかを判定することも容易ではなく、 一般的な判定法は残念ながら存在しない。 ここでは、よく用いられる 3 つの判定法を紹介する。


命題 10

正項級数 (1) に対して ( $\alpha_n\geq 0$)、

  1. (ダランベールの判定法)

    \begin{displaymath}
\lim_{n\rightarrow\infty}\frac{\alpha_{n+1}}{\alpha_n}=\ell
\end{displaymath}

    のとき、 $0\leq\ell<1$ ならば (1) は収束し、 $\ell>1$ ならば (1) は発散する
  2. (コーシーの判定法)

    \begin{displaymath}
\lim_{n\rightarrow\infty}\sqrt[n]{\alpha_n}=\ell
\end{displaymath}

    のとき、 $0\leq\ell<1$ ならば (1) は収束し、 $\ell>1$ ならば (1) は発散する。
  3. (積分判定法)
    $f(x)$$x\geq 1$ で定義された単調減少関数で、$f(x)\geq 0$ で、 $x=n$ (自然数) に対して $f(n)=\alpha_n$ になるとき (よって $\alpha_n$ も単調減少数列である必要がある)、 広義積分

    \begin{displaymath}
\int_1^\infty f(x)dx
\end{displaymath}

    の収束、発散と (1) の収束、発散は一致する。


証明

1.
$0\leq\ell<1$ のときは、それが極限であるから、 $\ell<\ell'<1$ なる $\ell'$ に対して十分大きい $N$ から先の $n$ ($n\geq N$) に対しては

\begin{displaymath}
\frac{\alpha_{n+1}}{\alpha_n}<\ell'
\end{displaymath}

が成り立つはずである。 よって、$n>N$ に対して

\begin{displaymath}
\alpha_n<\ell'\alpha_{n-1}<(\ell')^2\alpha_{n-2}<\cdots
<(\ell')^{n-N}\alpha_N
\end{displaymath}

となるので、

\begin{displaymath}
\beta_n = \left\{\begin{array}{ll}
\alpha_n & (1\leq n<N)\\
(\ell')^{n-N}\alpha_N & (n\geq N)
\end{array}\right. \end{displaymath}

とすると、 $0\leq \alpha_n\leq \beta_n$ で、

\begin{eqnarray*}\sum_{k=1}^n\beta_k
&=&
\sum_{k=1}^{N-1}\alpha_k +\sum_{k=N}^...
...ha_N}{1-\ell'}
\hspace{1zw}(n\rightarrow\infty \mbox{ のとき})
\end{eqnarray*}

となるので $\displaystyle \sum_{n=1}^\infty \beta_n$ は収束する。 よって $\displaystyle \sum_{n=1}^\infty \alpha_n$ も収束する。

$\ell>1$ のときは、$\ell>\ell'>1$ なる $\ell'$ に対して 十分大きい $N$ から先の $n$

\begin{displaymath}
\frac{\alpha_{n+1}}{\alpha_n}>\ell'
\end{displaymath}

が成り立つはずなので、 $\alpha_n>(\ell')^{n-N}\alpha_N$ となり、$\ell'>1$ より $(\ell')^{n-N}\alpha_N\rightarrow\infty$ ( $n\rightarrow\infty$ のとき) となるので、 $\alpha_n$ も無限大に発散するので明らかにこの級数は収束しない。

2.
この場合も、1. の場合とほぼ同様。$\ell<1$ なら、 $\ell<\ell'<1$ に対してある $N$ から先の $n$ $\sqrt[n]{\alpha_n}<\ell'$ が成り立ち、 よって $\alpha_n<(\ell')^n$ となるので、

\begin{displaymath}
\gamma_n = \left\{\begin{array}{ll}
\alpha_n & (1\leq n<N)\\
(\ell')^n & (n\geq N)
\end{array}\right. \end{displaymath}

とすればよい。発散の方も 1. と同様。

3.
$f(x)$ は単調減少関数であるから、 $k\leq x\leq k+1$ では、 $f(k)\geq f(x)\geq f(k+1)$ なので、これを この範囲で積分すると

\begin{displaymath}
f(k)\geq \int_k^{k+1}f(x)dx\geq f(k+1)
\end{displaymath}

が成り立つ ($k\geq 1$)。よって、

\begin{eqnarray*}\sum_{k=1}^{n}\alpha_k
&=&
\sum_{k=1}^{n}f(k)
\geq
\sum_...
...um_{k=1}^{n-1}\int_k^{k+1}f(x)dx
\\ &=&
f(1)+\int_1^nf(x)dx
\end{eqnarray*}

となる。よって、 $\displaystyle \int_1^\infty f(x)dx$$\infty$ に発散すれば $\displaystyle \sum_{n=1}^\infty \alpha_n$ も発散し、 $\displaystyle \int_1^\infty f(x)dx$ が収束すれば $\displaystyle \sum_{n=1}^\infty \alpha_n$ も収束する。


これらの判定法は正項とは限らない級数の場合も適用でき、 例えばダランベールの判定法ならば、一般の級数に対しては、

\begin{displaymath}
\lim_{n\rightarrow\infty}\left\vert\frac{\alpha_{n+1}}{\alpha_n}\right\vert=\ell
\end{displaymath}

のとき、$0\leq\ell<1$ ならば (1) は絶対収束、 $\ell>1$ ならば発散、のようになる。

例をいくつか紹介する。

\begin{displaymath}
\sum_{n=0}^\infty\frac{1}{n!}
=1+\frac{1}{1!}+ \frac{1}{2!}+ \frac{1}{3!}+\cdots\end{displaymath} (6)

この級数の場合、ダランベールの判定法により

\begin{displaymath}
\frac{\displaystyle \frac{1}{(n+1)!}}{\displaystyle \frac{1}...
...
\rightarrow 0 \hspace{1zw}(n\rightarrow\infty \mbox{ のとき})
\end{displaymath}

であるから収束することが言える (実際には $e$ に収束)。


\begin{displaymath}
\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n^2}
=\frac{1}{1^2}+ \frac{1}{2^2}+ \frac{1}{3^2}+\cdots\end{displaymath} (7)

この場合、

\begin{displaymath}
\frac{\displaystyle \frac{1}{(n+1)^2}}{\displaystyle \frac{1...
...
\rightarrow 1 \hspace{1zw}(n\rightarrow\infty \mbox{ のとき})
\end{displaymath}

であるから、ダランベールの判定法では収束の判定ができない。 この場合は、$1/x^2$ が単調減少関数であり、広義積分は

\begin{displaymath}
\int_1^\infty\frac{dx}{x^2} = \left[-\frac{1}{x}\right]_{x=1...
...w\infty}\left(-\frac{1}{x}\right)-\left(-\frac{1}{1}\right)
=1
\end{displaymath}

となって収束するので、(7) も収束する (実際には $\pi^2/6$ に収束することが知られている)。 一方、$1/x$ の場合は、

\begin{displaymath}
\int_1^\infty\frac{dx}{x} = \left[\log\vert x\vert\right]_{x...
...nfty}
=\lim_{x\rightarrow\infty}\log\vert x\vert-\log 1=\infty
\end{displaymath}

となるので、前にも見たように

\begin{displaymath}
\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n}=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\cdots
\end{displaymath}

は発散する。


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竹野茂治@新潟工科大学
2006年9月26日