学生の答案には、式の意味、等号の使い方を良く理解せずに、
まず「対数の書き方」であるが、現在ほとんどの教科書では 対数の底は真数より少し小さく、真数よりもわずかしか下にならない位置に
だから、手書きでは「底は下に、真数は上に」と上下に分けて 書くような形、すなわち
実際に私も高校のときにそのように書くように習い、 多くの人 (例えば数学関係者) がそのように書くのを見てきたが、 最近の学生にはなぜか本の活字のように書くものがかなりいて、 強く違和感を感じてしまう。
現在普通に教科書などに使われている対数の記号は、 国語の明朝体と教科書体の問題1と同じで、 昔の印刷上の制限によって使われていた書き方なのではないかと想像する。 しかし、教科書にはそのようなことは明示されていないので、 印刷されている数式の見た目のままに書くか書かないかは 初めて教えてもらうときの教員の指導に依存してしまうことになる。
微分の「」の記号にも気になる書き方がある。 初学者に多いのは、 を のように書いてしまう間違いである。 これは、左から順に作用するので、
また、 や のような関数名には を直接つけて 、 と書くことが許されるが、 具体的な関数にはカッコで囲んで をつけ、
上下に広く取れない箇所で分数を書くときに を のように書く書き方もあるが、 これについても詳しく説明されることはないためか、 あいまいな書き方が用いられることがある。 例えば、
「」は、 実は「」のように書かれてしまうことが多いのだが、 これは、「」と「」のどちらなのかが わかりにくい、あいまいな記法だと思う。
例えば、, を使って書けば、 「」は「 」となるように見え、 これはもちろん「」のことを意味してしまうので、 「」とは解釈しない人もでるだろうと想像できる。 だから、「」のつもりで書きたいのであれば、 本来は「」と書くべきだと思うが、 残念ながら「」と書かれることが多いようである。
式がまぎらわしい場合に、 カッコを書くことで解消できるような問題については、 まぎらわしくないようにカッコをつければいいのだが、 「省略できるカッコはなるべく省略する」という暗黙のルールのために、 必要なカッコ (優先順位変更のための必要性ではなく、 人にまぎらわしくなく伝えるための必要性) まで省略してしまって、 そのために正しく人に伝わらなくなってしまう。
そのような間違いをするくらいなら、 美的感覚に基づくそのような暗黙のルールなどは無視してしまって、 カッコをたくさん書く方がまだましだと思うが、 いかがであろうか。
ちなみにコンピュータプログラムでは、 バグを防ぐために「省略できるカッコはなるべく省略する」よりも、 必要なカッコを省略してしまう愚をおかす危険をさけるために、 ルール上は不要なカッコでも、むしろちゃんと書くことが推奨されている。 そちらの方がよほど真っ当な理屈に思えるが、 それに関しては、 学ぶ側の学生と教える側の学生の意識の違いがあるような気がしている。
竹野茂治@新潟工科大学