2 教科書の証明

指数関数、対数関数の微分の公式は以下の通り。

教科書 [1] では、これらを以下の順で示している。

  1. $e$ の定義 (教科書 p11 下):
      $\displaystyle
e = \lim_{n\rightarrow \infty}{\left(1+\frac{1}{n}\right)^n}
\hspace{1zw}(\mbox{$n$\ は自然数})
$ (1)
  2. それは実数 $x$ に拡張でき、さらに $x\rightarrow -\infty$ でも 同じものに収束 (教科書 (1.1)):
      $\displaystyle
\lim_{x\rightarrow \pm\infty}{\left(1+\frac{1}{x}\right)^x} = e
\hspace{1zw}(\mbox{$x$\ は実数})
$ (2)
  3. (2) で $1/x=h$ としたもの (教科書 p13 上):
      $\displaystyle
\lim_{h\rightarrow 0}{(1+h)^{1/h}} = e
$ (3)
  4. (3) の対数を取ったもの (教科書公式 1.4):
      $\displaystyle
\lim_{h\rightarrow 0}\frac{\log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$e$}}(1+h)}{h}=1
$ (4)
  5. (4) で $\displaystyle \log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$e$}}(1+h)=t$ とすると 得られるもの (教科書公式 1.5):
      $\displaystyle
\lim_{t\rightarrow 0}\frac{e^t-1}{t}=1
$ (5)
  6. (4) と微分の定義から公式 2 を、 (5) と微分の定義から公式 1 を導く
  7. 公式 3 は対数微分法で (教科書に証明はない)
  8. 公式 4 は底の変換で (教科書に証明はない)

上の 2. の (2) については教科書には詳しい説明はないが、 それは以前 [2] で説明をした。 その他、7., 8. 以外は教科書に書いてある通りなので、以下で 7., 8. の 説明をする。 なお、7., 8. の証明が教科書 [1] に書いてないのは、 多分 7. の方は、その直前に書いてある $y=2^x$ の微分の対数微分法による例で 一般の $y=a^x$ の場合もわかるだろう、ということだと思われるし、 8. の方は、公式としなくても底の変換を行えばすぐに計算できるだろう、 ということだと思われる。

まず、7. は、いわゆる「対数微分法」を使うのであるが、 それは合成関数の微分の応用なので、 ここでは公式 2 と合成関数の微分を組み合わせることで、 公式 3 が成り立つことを示す。

$y = f(x) = a^x$ とし、この微分を考える。

$\displaystyle z=\log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$e$}}y=\log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$e$}}f(x)
$
とすると、合成関数の微分と公式 2 より、
$\displaystyle z'
=\frac{dz}{dx} = \frac{dz}{dy}\times\frac{dy}{dx}
=\left(\log...
...{\scriptsize$e$}}y\right)'\times f'(x)
=\frac{1}{y}\,f'(x)
=\frac{f'(x)}{f(x)}
$
となるが、一方で $z=\log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$e$}}a^x=x\log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$e$}}a$ より $z'=\log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$e$}}a$ と なる。よって、
$\displaystyle \frac{f'(x)}{f(x)} = \log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$e$}}a
$
なので、
$\displaystyle f'(x)=f(x)\log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$e$}}a=a^x\log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$e$}}a
$
となって公式 3 が得られる。

次は 8。これは、底の変換により

$\displaystyle \log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$a$}}x=\frac{\displaystyle \log...
...ex}{\scriptsize$e$}}x}{\displaystyle \log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$e$}}a}
$
と書けるので、公式 2 より
$\displaystyle \left(\log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$a$}}x\right)'
=\frac{1}{...
...}}x\right)'
=\frac{1}{x\displaystyle \log_{\raisebox{-.5ex}{\scriptsize$e$}}a}
$
となって公式 4 が得られる。このようにして教科書では という流れで 4 つの公式を示しているようである。

解析学の教科書の多くが、似たような流れで指数関数、対数関数の 導関数の証明を紹介しているが、 公式 3 の証明については対数微分法以外にも、 公式 1 から得る方法もあるし、公式 4 から得る方法もあり、 そういう証明を採用している教科書も少なくない。

竹野茂治@新潟工科大学
2022-11-01