5 積→和の公式を利用する方法

4 節では半角の公式を利用して偶数乗のみを解消したが、 奇数乗の積分には置換積分を利用した。 しかし、三角関数の積→和の公式を利用すれば奇数乗の項も累乗の形を解消できる。

積→和の公式とは、加法定理から得られる以下の公式である。

\begin{displaymath}
\left\{\begin{array}{ll}
\sin A\cos B & = \displaystyle \f...
...ystyle \frac{1}{2} \{\cos(A-B)+\cos(A+B)\}
\end{array}\right.\end{displaymath} (14)

例えば、4 節の $J(6)$ の計算に出てきた 3 乗の項は以下のように変形できる。

\begin{eqnarray*}\lefteqn{\frac{1}{8} \cos^3 2x
=
\frac{1}{8} \cos^2 2x \cos...
... 2x+\cos 6x)
 &=&
\frac{3}{32} \cos 2x+\frac{1}{32} \cos 6x\end{eqnarray*}


よって、
$\displaystyle \cos^6 x$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{5}{16}+\frac{3}{8} \cos 2x+\frac{3}{16} \cos 4x
+\frac{3}{32} \cos 2x+\frac{1}{32} \cos 6x$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{5}{16}+\frac{15}{32} \cos 2x+\frac{3}{16} \cos 4x
+\frac{1}{32} \cos 6x$ (15)

となるので、
\begin{eqnarray*}J(6)
&=&
\int\left(\frac{5}{16}+\frac{15}{32} \cos 2x+\frac{...
...{64} \sin 2x+\frac{3}{64} \sin 4x
+\frac{1}{192} \sin 6x + C\end{eqnarray*}


となる。

この方法の難点は、積→和の公式自体が面倒であることと、 それによる変形もそれなりに面倒なことだろう。 さらに、元の関数が累乗の形であるのに対して、 この方法による結果はすべて $\sin nx$ のように累乗ではない形なので、 累乗の形で解を求めたい場合には、 その結果を加法定理で展開をしなければいけない点も、 場合によっては欠点となるかもしれない。

竹野茂治@新潟工科大学
2010年3月12日