3 断面の積分

直方体の体積 (3) は、 $(n-1)$ 次元の直方体
\begin{displaymath}
\{(x_1,\ldots,x_{n-1});
\ a_1\leq x_1\leq b_1,\ldots,a_{n-1}\leq x_{n-1}\leq b_{n-1}\}
\end{displaymath}

の体積
\begin{displaymath}
(b_1-a_1)\times \cdots \times (b_{n-1}-a_{n-1})
\end{displaymath}

$(b_n-a_n)$ をかけたものになっている (3 次元の柱体の体積が (底面積)$\times$(高さ) となることと同じ)。

曲がった図形の場合は、もちろん単に高さをかけるわけにはいかず、 そこが積分となるわけであるが、その原理は、

「体積は、$x_n=t$ による切り口の図形の $(n-1)$ 次元の体積を、 $t$ に関して端から端まで積分したもの」
である。これは、3 次元の体積 $V$ を求める公式が、 その立体を $x=t$ で切った切り口の断面積 $S(t)$ $(a\leq t\leq b)$ によって、
\begin{displaymath}
V=\int_a^b S(t)dt\end{displaymath} (5)

と書けることに対応する。

$n$ 次元球の場合、$x_n=t$ による $B_1(\mbox{\boldmath$0$})$

\begin{displaymath}
x_1^2+\cdots+x_{n-1}^2+x_n^2\leq 1
\end{displaymath}

の切り口の図形は、
\begin{displaymath}
x_1^2+\cdots+x_{n-1}^2\leq 1-t^2
\end{displaymath}

となり、これは半径が $\sqrt{1-t^2}$ ( $-1\leq t\leq 1$) の $(n-1)$ 次元球を意味する。 よって、その $(n-1)$ 次元の体積は、(4) により、
\begin{displaymath}
V_{n-1}(\sqrt{1-t^2})=\alpha_{n-1}(\sqrt{1-t^2})^{n-1}
\end{displaymath}

となる。よって、(5) により、
\begin{displaymath}
V_n(1)=\int_{-1}^1 V_{n-1}(\sqrt{1-t^2})dt
\end{displaymath}

すなわち、
\begin{displaymath}
\alpha_n =\int_{-1}^1 \alpha_{n-1}(1-t^2)^{(n-1)/2}dt\end{displaymath} (6)

となることになる。
\begin{displaymath}
I_n=\int_0^1 (1-t^2)^{(n-1)/2}dt\end{displaymath} (7)

と書くことにすれば、(6) は、
\begin{displaymath}
\alpha_n=2\alpha_{n-1}I_n\end{displaymath} (8)

となる。

例えば $\alpha_2$ は、半径 1 の 2 次元の円の面積を意味するので、 $\alpha_2=\pi$ となる。 よって、$n\geq 3$ に対する積分 $I_n$ の値が求まれば、 (8) によって $\alpha_n$ ($n\geq 3$) が 順に求まることになる。

竹野茂治@新潟工科大学
2007年8月6日