3 1 次変換の不変方向
本節から、固有値・固有ベクトルに関連する具体例をいくつか紹介する。
まず、本節では 1 次変換の不変方向について説明する。
1 次変換とは、主に 2 次元、または 3 次元の点から点への 1 次式
による変換で、
(1)
の形に表されるものを指す。これは、それらの点の位置ベクトルと行列
により
と表される (3 次元も同様)。
1 次変換は線形写像なので、
基本ベクトルの像で決定する。すなわち、基本ベクトル
に対し、
より、
(2)
と表されるので、
,
に基づく格子が、
により
,
に基づく格子の座標平面に変換される
と見ることができる (図 1)。
図 1:
基本ベクトルの変換先による格子での 1 次変換の表示
|
この 1 次変換の様子を知る、もう一つの方法が、
固有値、固有ベクトルによる不変方向の確認である。
1 次変換の固有値がともに実数で、固有値、固有ベクトルを
とすると、
方向、
方向のベクトルは、
この 1 次変換で方向は不変で、拡大 (固有値が負なら反転も) のみとなる。
例えば、
なら、
なので、固有値は , , 固有ベクトルは、
となる。
よってこの
の方向には反転され、
の方向には 2 倍の拡大、
ということになる (図 2)。
図 2:
固有ベクトル方向の格子
|
最初の基本ベクトルの変換よりも、
むしろ不変方向に見る場合が都合がいい場合もあるだろう。
竹野茂治@新潟工科大学
2024-02-29