応用数理 A で使用した教科書 [1] には、 ベクトル解析、常微分方程式、複素関数論、ラプラス変換の 4 分野が含まれていて、 講義ではそのうち常微分方程式とラプラス変換の講義を行っている。 工学部では、この 4 分野を別々の講義として教えることも多く、 よって各分野別々の教科書ももちろんたくさんある。
ところで、ラプラス変換は複素関数論との関連もあり、 変換後の関数を複素関数として議論したり、 ラプラス逆変換を複素平面上の線積分として表したりすることもできるので、 ラプラス変換を学ぶには、ある程度複素関数論の知識があるといいのであるが、 ラプラス変換単独の教科書では、 複素関数論の知識をあまり仮定はしづらいようで、 複素数の利用はごく基本的なところにとどまっていることが多い。 実はラプラス逆変換の計算にも留数を利用した計算方法があるのであるが、 そのような事情でラプラス変換単独の本では その公式は紹介されていないことが多い。
しかし、この教科書 [1] には複素関数論も含まれていて、 ローラン展開や留数計算なども説明されているので、 その留数を利用したラプラス逆変換の計算方法も紹介されている。
この公式の理解や実際の計算には複素関数論の知識がある程度必要であるが、 かなり有用な計算方法でもあるし、 通常のラプラス逆変換の計算法 ([3] 参照) と比べても計算量もそれほど多くはなく、 ものによってはそれなりによい計算方法だと思うので、 教科書 [1] とは少し違った形ではあるが、 本稿でその公式を説明し、具体的な計算をいくつか紹介しようと思う。
竹野茂治@新潟工科大学