そのために、[1] では p132 で、 accurate method と simplified method をいつ使うか、 そしてさらに accurate method による解の作り方を修正する (P) という要請を 追加している。
そして、この構成法により、p132 と、少し後の話になるが p138 の 7.3 節の 4. で 次のことが言えると述べている。
まず 1. であるが、 accurate method では、要請 (P) により流入波と同じ front は 確かに一意的に伸びることになる。 一方、simplified method では、2 通りの場合 (p131 CASE 1, CASE 2) があり、 まず物理 front 同士の衝突の場合は p131 に「(7.25) のように」 Riemann 問題の解から近似解を作る、と書いているが、 「(7.25) のように」ということは、 より大きい膨張波が現れれば それは小さい分解 front に分離することを意味する。
しかし、その直後に 「(7.27) よりそれは、 の場合は丁度 2 つの front、 の場合は丁度 1 つの front からなる」と述べている。 これは、膨張波を小さいものに分解しないことを意味するように読める。 下に書かれている図 (Figure 7.7, Figure 7.8) もそれを 説明しているように見えなくもない。
「(7.27)」は、膨張波の分解が起こらないことを意味するのではなく、 Riemann 問題の解が と の 2 つの特性族の波しか 出さないことを意味するので、膨張波を分解しない根拠にはならない。
また、要請 (P) は、「accurate method では」と 明確に述べているので、文面上は simplified method には 適用されず、これも分解しない根拠にはならない。
よって分解しない必然性があるとすれば、あとはその大きさが 以下 であることだけであるが、逆に要請 (P) は より大きなサイズを 持つ膨張 front を作り得ることを述べていて、 もしそのような膨張 front が存在すれば、 それとサイズの積が 未満になるような小さな衝撃波との衝突が起こすと それは simplified method で処理され、 それにより より大きな膨張波が出てしまうことになり、 その分解を止めることはできず、 結局 1. の一意的な延長はできなくなってしまう。
この状況を防ぐには、以下の (Erf) の評価か、別の要請 (P') の いずれかが必要になる。
次は、6. の方であるが、 当然物理 front 接続と非物理 front 接続は 1 度しか交わらないし、 特性族の異なる物理 front 接続同士も 1 度しか交わらないことはわかる。 問題は、同じ特性族の物理 front 接続同士が、2 度以上交わることはないか、 という点である。
衝突したときに accurate method が行われるのであれば、 (P) によりそれは 1 つの特性族には 1 本の front として 合体した形で延長されるので、当然それ以上の衝突は発生しない。 一方 simplified method が行われる場合は、 「(P') の保証があれば」accurate method 同様 1 つの特性族には 1 本の front になるが、 もし (P') の保証がなければ複数の分解 front に分離する可能性がある。
つまり、この 6. に関しても 1. と同様の問題があり、 やはり (P') が必要となるので、 本稿では (P') を仮定して話をすすめることにする。
なお、その (P), (P') の要請、および後 (3.6 節と 6 節) で述べる 速度変化の制限の仮定の元、 それを満たす近似解が作れていれば、 上の 1.7. が確かに成り立ち、よって衝突時刻も有限個となり、 大きさに関する a priori 評価さえあれば、 近似解は有限の時間内で無限回の衝突を起こすことはなく、 無限時刻にまで近似解を伸ばせることがわかる。
竹野茂治@新潟工科大学